SIJIHIVE Team

6月26日8 分

音楽産業が環境に与える影響とは?実際の取り組み事例についても解説

私たちは限りある資源を利用して生活しており、日々の行動が環境にさまざまな影響を与えています。音楽産業は年々市場を拡大していますが、音楽産業が環境に与える影響はどのようなものなのでしょうか。

音楽業界が環境問題に取り組むためには、まず音楽産業が環境に与えている影響について知っておく必要があります。

本記事では音楽産業が環境に与える影響について、詳しく解説します。

実際にアーティストが実践している環境問題への取り組みについても解説するので、音楽関係者や環境問題の課題解決に取り組む事業者はぜひ参考にしてみてください。

音楽業界が環境問題に取り組む必要性について

まずは、音楽業界が環境問題に取り組む必要性について確認しておきましょう。

年々環境問題に対する意識が高まる中で、音楽業界も持続可能性に焦点をあてた活動が期待されています。

実際に音楽業界が行うライブイベントや音楽のリリースなども、大量のエネルギー消費や温室効果ガスの排出などで、環境に対して多くの影響を与えています。環境負荷を軽減するために、業界全体で持続可能な方法の選択が求められるでしょう。

音楽は多くの人々の心を動かす力があります。再生可能エネルギーの利用、エコフレンドリーなツアーの実施、リサイクルの推進などを通じて、多くの人々に環境問題への取り組みの大切さを伝えることが期待されています

音楽産業が環境に与える影響とは

それでは、実際に音楽産業が環境に与えている影響について詳しく見ていきましょう。

音楽産業の2大ビジネスは、ライブイベントと音楽のリリースです。

それぞれの事業内容は環境にどのような影響を与えているのでしょうか。

ライブイベントが環境に与える影響

ライブイベントは大規模になると数万人が関わり、状況によっては環境にも多くの影響を与える場合があります。

ライブイベントが環境に及ぼす影響は、主に次のとおりです。

  • ライブイベント内での大量のエネルギー消費

  • アーティストやスタッフ、観客などの移動による温室効果ガスの発生

  • ライブイベントで発生する廃棄物の処理

ライブイベントでは照明、音響、ビデオスクリーンなどに大量の電力が必要になるため、発電時に温室効果ガスを排出します。

また、アーティストやスタッフ、観客の大規模な移動によっても大量の二酸化炭素が排出されます。

二酸化炭素を中心とする温室効果ガスの増加は地球の温暖化や海面の上昇、生態系の変化などに影響を与えているといわれており、音楽イベントでは温室効果ガス排出量の削減が大切です。

さらに、イベント会場では食品容器、飲料カップ、パンフレットなどの使い捨てアイテムが大量に廃棄されます。リサイクルが行われない場合、ゴミの焼却量が増え、温室効果ガスの増大につながる可能性があるでしょう。

音楽のリリースが環境に与える影響

一方、音楽のリリースが環境に与える影響は次のとおりです。

  • CD や映像作品に関わる資源ゴミの排出

  • デジタル配信に関する大量のエネルギー消費

CD や DVD、ブルーレイの製造には、プラスチックや金属などの資源が大量に使用されるため、廃棄の際にはプラスチックや金属ゴミが多く排出されます。

また、デジタル配信は物理的な製造品に比べて環境負荷が少ないように思えますが、クラウド上での音楽の保存や再生には膨大な電力が消費されます。

実際にデジタル音楽時代になってから、音楽関連のデータ管理に多くの電力が使用されているため、温室効果ガスの増大が懸念されています。

音楽業界が環境問題に対して取り組んでいる事例

音楽業界では環境問題に配慮したアクションが求められていますが、過去にはさまざまなアーティストが環境問題に対して取り組んできました。

実際に行われてきた環境問題への取り組みを見ていきましょう。

環境に配慮した形式でツアーを行う~コールドプレイの例~

イギリスのロックバンド「コールドプレイ」は2019年、環境に負荷がかかるコンサートツアーは当面行わないと発表しました。

その3年後の2022年、環境保護に関するさまざまな施策を用意したうえで、温室効果ガスの排出量について前回ツアーの50%削減を目標とする新たなワールドツアーを開催しています。

コールドプレイの公式サイトに記載されている主な施策は次のとおりです。

  • キネティック(動力)フロアを会場に設置

  • ソーラーパネルの設置

  • 再生可能なバイオ燃料の使用

  • ステージ設営に再利用可能な材料を使用

  • リストバンドの再利用

  • 飛行機移動を最小限に

  • 低炭素な移動手段で会場を訪れたファンへのサービス

  • チケットの売り上げごとの植樹

一番最初のキネティックフロアは、ライブ中に観客が動くことでエネルギーが生成できてしまうという画期的な仕組みを備えた設備のことです。

結果として、コールドプレイは自身の Instagram にて、今回のツアーの最初の2年間の CO2排出量が2016〜2017年時のツアーと比較して59%減少したと、ファンに報告しています。

世界的にも有名なロックバンドが取り組んだ施策は、世界中の多くの人々が環境に対して関心を持つ大きなきっかけになったでしょう。

気候危機に対しての活動~ビリー・アイリッシュの例~

アメリカのシンガーソングライター、ビリー・アイリッシュは、2022年にワールドツアー「Happier Than Ever」を開始しました。

本ツアーは気候危機に立ち向かうミュージシャンを支援する非営利団体「REVERB」と提携し、環境問題を学びながらアクションを起こせる仕組みに注目が集まりました。

ビリー・アイリッシュの公式サイトに記載されている主な施策は次のとおりです。

  • 各会場に気候危機問題に関するイベントを開催する「エコヴィレッジ」を設置

  • 観客の寄付に対して特典を付与

  • 会場内でプラントベース(植物由来)の食事を提供

  • スタッフの移動とホテル滞在中の二酸化炭素排出量を計算

結果として「Happier Than Ever」ワールドツアーの公演内では117,000本以上の使い捨てプラスチックボトルが削減され、環境プロジェクトを支援するために99万ドル以上を調達できました。

また、ツアー中のスタッフにプラントベースの食事を提供することで、880万ガロンの水が節約され、気候に関するプロジェクトを通して15,000トン以上の CO2e が+-ゼロになるという成果につながったそうです。

普段触れる機会が少ない気候危機問題に関するイベントや、プラントベースの食事を会場内に用意することで、環境問題を考えるきっかけになった人々も多いでしょう。

日本国内で環境問題を身近に考えてもらう活動~ap bank fes の例~

ap bank fes は環境問題を身近に考えてもらう場として、2005年に開始された音楽フェスです。

ライブステージでは小林武史、櫻井和寿を中心に結成されたバンド「Bank Band」とゲストミュージシャンたちとの競演などが名物になっており、2023年に開催した ap bank fes '23では、3日間で約9万人を動員しました。

ap bank fes の公式サイトに記載されている主な施策は次のとおりです。

  • 食事、雑貨、グッズは環境や人に優しい素材を使用

  • お箸・カトラリーの持参を呼びかけ

  • リサイクル可能な紙コップを提供

  • 会場内のゴミを分別し資源としてリサイクル

  • 「ミストシャワー」で使用する電力に植物性の廃食油から作られた代替燃料であるバイオディーゼル燃料を使用

  • 太陽光からつくられる電気を使用

ap bank fes は日本国内でも有名な環境問題に取り組む大型フェスです。実際に ap bank fes で環境問題に関心を持った方も多いのではないでしょうか。

音楽業界がこれから取り組むべき施策

音楽業界には、これからさらに環境問題への取り組みが求められるでしょう。

環境問題への施策として、押さえておくべきポイントは次のとおりです。

  • 二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量を削減する

  • 限りある資源や自然環境へ配慮する

  • 有害物質や汚染物質の排出量を削減する

音楽業界、アーティストは上記のポイントを確認しながら、自身の活動で何かできることはないかを再度考える必要があります。

環境問題は、いかに多くの人々が関心を持って取り組むかが重要です。音楽は影響力があるため、多くの人々に環境問題に対して関心を持ってもらうこともできます。

音楽業界全体で環境問題に取り組めば、賛同したファンもリスナーも巻き込んで、大きな力になるはずです。

まとめ

音楽業界の環境問題に対しての積極的な取り組みは、持続可能な未来を築くために重要になるでしょう。そのためには音楽業界全体が協力し、環境保護のための具体的なアクションの継続が必要です。

アーティスト、クリエイター、イベンター、スタッフ、ファンなどの一人一人のアクションが大きな力になり、次世代へと続く持続可能な社会の実現につながります。

環境問題が解決に向かうためには、一人でも多くの人が環境問題に関心を持つことが大切です。環境問題の課題解決に取り組む事業者は、再生可能エネルギーの導入、廃棄物の削減、リサイクルの推進などのエコフレンドリーな活動と同時に、環境問題に関しての発信の継続が求められています。

参考サイト:

https://sdgsmagazine.jp/2022/07/22/6970/

https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/05/post-12111_2.php#google_vignette

https://qetic.jp/life-fashion/musicconsumption-190409/313452/

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著者プロフィール

TAKUTO SHIOYA

高校卒業後、音楽の専門学校で作曲・編曲を学ぶ。複数のバンド活動を経て2016年からソロで弾き語り活動を開始。ハイエースで10日間車中泊をしながら中国・四国地方ツアーをおこなったりと、現在も精力的にライブ活動中。大手メディアの Web ライター兼編集者としての顔も持ち、新潟、静岡、神奈川、埼玉、沖縄など移住拠点を定期的に移しながら、日々感じたことを記事にしている。

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