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AI 自動作曲でアーティストはどうなる?音楽の仕事は今後なくなるのか

更新日:6月13日


丘の頂上に座り幻想的な雲と星空を見上げる男性

近年では、AI 作曲ツールを活用してクオリティの高い曲が短時間で作成できるようになりました。また、AI で生成したビジュアルアートや声を活用した AI シンガーのデビューも話題になっています。


クリエイターのなかには、AI 作曲や AI シンガーが広まると、アーティストは今後必要なくなるのではないかと疑問に思う方もいるかもしれません。


そこで、本記事では「AI が広まるとアーティストは必要なくなるのか」について解説します。


人が感じているアーティストの価値、そしてその価値を AI は代替できるのかなど、AI とアーティストの関係についてわかりやすく解説するので、ぜひ参考にしてみてください。



クリエイターは時代にあわせて表現方法を見直す必要がある


ネオンが光る複数の建物とそれをつなぐサイバーネットワークの模型

本題に入る前に、時代の変化とクリエイターの関係性について今一度確認しておきましょう。


もしかしたら、クリエイターのなかには「時代が変わってもやることは変えたくない」と考える方もいるかもしれません。


しかし、クリエイターは時代を読み解きながら、自身の作品や表現方法を常に見直すことが大切です。


テクノロジーが進化するとライフスタイルが変化するため、価値観も変わります。時代によって音楽を聴く人の価値観が変化するのなら、作品を作成する過程や表現方法についても見直す必要があるでしょう。


たとえば、テクノロジーが発展して高画質の動画が手軽に見られるようになると、プロアーティストの作品も YouTube で無料で楽しめる時代になりました。


「音楽はお金を払って楽しむもの」という価値観から次第に「音楽は無料で楽しめるもの」という価値観に変化した結果、CD がなかなか売れない時代になりましたよね。


「TikTok で大バズリ中の話題のアーティスト」「フォロワー数〇〇人の大人気インスタグラマー」など、スマホや SNS が普及するにつれて、世間から支持されるアーティストの肩書きもずいぶん変化しています。


クリエイターは時代によって進化するテクノロジーを理解し、それに伴う人間の価値観の変化をキャッチしながら、自身の創作活動に時代のニーズを取り入れる必要があります。


また、少し先の未来を予想しながら活動すれば、ライバルが少ない状態の市場で活動できるため、先行者利益を得られる場合もあるかもしれません。


「なぜか自分の活動が上手くいかない」と悩んでいる方は、自身の表現方法を時代のニーズと重ね合わせてみて、ズレがないかを確認してみるとよいでしょう。



AI の台頭によるアーティストの仕事の変化


サイバー空間に佇むヘッドフォンをつけた和装の少女

さて、近年のテクノロジーの話題といえば、もっぱら AI が中心です。OpenAI が2022年11月に ChatGPT を発表してから、ビジネスのみでなく芸術活動の分野においても AI が活用され始めています。


元々 AI によって淘汰される職業は単純作業や計算作業などの AI で自動化できる分野であるといわれていて、「アートや音楽などのクリエイティブ分野は AI によって代替されることはない」という意見がスタンダードでした。


しかし、近年の AI 技術は「ストーリーライティング」「ビジュアルアート」「音楽」など、クリエイティブ分野でも効果を発揮しています。実際に AI が生成した画像や音楽をビジネスで活用している方もいるのではないでしょうか。


AI で高クオリティなビジュアルアートや音楽が生成できれば、アーティストや作曲家の仕事は奪われてしまうと考える方もいるかもしれません。


そこで、現代のアーティストやクリエイターは、AI がどのようにクリエイティブ分野の仕事に作用するのかについて読み解く必要があります。



AI はアーティストの代替になり得るかどうかの2つのポイント


白とオレンジの神経回路のようなものに覆われた人間の横顔

それでは、AI がアーティストの代替になるのかについて考えていきましょう。AI がアーティストに代替するのか否かを考える際は、次の2点のポイントについて検討する必要があります。


  1. 人間は「アーティスト」のどの部分に価値を感じてお金を払っているのか

  2. そのアーティストの価値は AI で代替できるのか


「人間が感じているアーティストの価値」を「すべて AI で代替できる」のならば、AI はアーティストの代替になり得るといえるでしょう。


上記の2点のポイントについて、それぞれ詳しく解説していきます。


人は「アーティスト」のどの部分に価値を感じてお金を払っているのか


まず、人は「アーティスト」のどの部分に価値を感じてお金を払っているのかについて明確にしておきましょう。人間がアーティストに魅力を感じる部分は、大別して次の2つです。


  1. アーティストが生み出す作品

  2. アーティスト自身


1点目はアーティストが生み出す作品です。音楽でいうなら「メロディ」「歌詞」「声」「楽器の音」などが挙げられるでしょう。


2点目はアーティスト自身です。アーティストの「ビジュアル」「性格」「生い立ち」「活動歴」「努力している姿」「ファンへの対応」などですね。


上記の2点の要素は相互に関連し、アーティストが持つ独自の価値と魅力を形成しています。


もしも、上記の1と2の両方の魅力を AI で代替できれば、AI はアーティストの代替になるといえます。


アーティストの価値を AI が代替できるのか


結論、AI は1点目の「アーティストが生み出す作品」は代替できますが、2点目の「アーティスト自身の魅力」を代替できないため、アーティストの代替になることは難しいといえます。


AI にはクオリティの高い作品を量産できるメリットがありますが、キャラクターに歴史や背景がないという大きなデメリットがあります。


音楽における「表現者自身の魅力、歴史、背景」は非常に重要です。たとえば、自分の子どもが幼稚園のお遊戯会で一生懸命練習した童謡を歌ってくれたら、感動してしまう方も多いのではないでしょうか。しかし、この感動はなにも歌が上手かったから生まれたわけではないですよね。


「あんなに小さかったのに、もう歌が歌えるまで成長した」

「両親に褒めてもらいたい一心で、苦手な歌を家でも一生懸命練習していた」

「おとなしい性格なのに、恥ずかしがらずに堂々と歌えていた」


音楽はなにも歌や楽器の音など、作品のクオリティのみに魅力を感じるわけではありません。同じ言葉でも、歌っている人が違えば意味も変わりますよね。


音楽作品やライブが完成するまでのストーリー、表現者の性格や努力している姿に魅力を感じるということに関しては、プロのアーティストにも同じことがいえます。


AI には歴史や背景という「アーティスト自身の魅力」がないため、人に感動を届けるアーティストに代わる仕事をするのは難しいでしょう。



人間は芸術の「不完全」に惹かれる


未完成のジグソーパズル

また、先述した理由のほかに、AI がアーティストになり得ない理由としてもう一つ重要なポイントがあります。


それは「人間は完全なものよりも、不完全なものに魅力を感じるケースがある」ということです。


AI はクオリティの高い音楽やアートを数秒で生成できますが、総評して「隙がなく完全な作品を生成する」傾向があります。


ただ、アーティストに関しては感情が溢れてしまった際のしゃがれた声やトーンのブレ、走るリズムなどにも感動するポイントがありますよね。


アーティストには AI が作り出す完璧さよりも、時折垣間見える人間の不完全さが重要なのかもしれません。


弊社が生業としている翻訳やコンテンツ業務も、人が生み出すものである限り決して完全ではありません。常により良く変えていきたいと見出せる部分があるからこそ、毎日続けていく上でのモチベーションも湧いてくるのだと思います。


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ただし AI によって代替される音楽分野はある


鍵盤付きミキサーサウンドボードを操作する赤いロボット

AI がアーティストのすべてを代替することは難しいですが、分野によっては AI で代替できる部分もあるでしょう。


それは、アーティスト自身の魅力や作品の背景が必要のない音楽分野です。

たとえば、空間や作品を装飾する BGM は、AI が作成した音楽でも代替できるでしょう。


カフェやオフィスで流れる癒しの BGM にはアーティストの背景は必要ありませんし、癒しを感じられるコード進行やメロディラインを AI が分析して作成した方が効率がよさそうですよね。


音楽やアートなどの作品のみが消費される分野に関しては AI に代替される可能性があることを理解すれば、クリエイターは自身の方向性を見直せるかもしれません。



まとめ


アーティストは AI が代替できない価値を把握し、その価値になる部分をきちんと発信しながら活動することが大切です。


AI とアーティストの価値をよく理解すれば、AI 時代でもアーティストは十分活躍できるはずです。


AI によってライフスタイルが変化しようとしている今こそ、アーティストやクリエイターは自身の表現方法を見直すよいタイミングかもしれません(自戒の念を込めて)。


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著者プロフィール


TAKUTO SHIOYA


高校卒業後、音楽の専門学校で作曲・編曲を学ぶ。複数のバンド活動を経て2016年からソロで弾き語り活動を開始。ハイエースで10日間車中泊をしながら中国・四国地方ツアーをおこなったりと、現在も精力的にライブ活動中。大手メディアの Web ライター兼編集者としての顔も持ち、新潟、静岡、神奈川、埼玉、沖縄など移住拠点を定期的に移しながら、日々感じたことを記事にしている。


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