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執筆者の写真SIJIHIVE Team

日本人には衝撃?中国の割り勘事情

更新日:5 日前



レストランのテーブルでクレジットカードの精算機を差し出す定員の腕と、各自のクレジットカードを差し出す6人の男女の腕

約10年中国で生活し、帰国したときに違和感を感じたことはいろいろとありましたが、その中でも上位にランクインするのが日本の「割り勘文化」です。多くの方がご存じのように中国では食事の支払いに関して「おごり文化」が浸透しています。


今回は、食事の支払いに関するカルチャーの違いから見えてくる中国の人間関係の「縮め方」や、「おごり文化」にまつわる Q&A を取り上げます。



「おごり文化」は一種の儀式


4人の男女がテーブルで向かい合って座り、中国料理の海鮮鍋や炒め物、カクテルなどを楽しんでいる様子

中国から帰国したある日、友人から「お寿司の美味しいお店があるから今度一緒に行こう」と誘われたことがありました。中国から戻ったばかりで「おごり文化」の影響が抜けない私は妻と「あのお店って『まわる寿司』じゃないよね。高いけど、大丈夫かな?」と、はなから「おごられる」ことを前提にして出かけました。


中国であれば、料理を注文するときに、招いた側がリードしてくれるのが一般的です。「何が好きか?」「苦手なものはないか?」「これはどうだ」「これも頼め」「遠慮するな」と、こちらがゆっくり選ぶ間もないくらい気遣ってくれ、食べきれないほどの料理をどっさりオーダーしてくれます。


しかし、友人と一緒に行ったお寿司屋さんではそんな気配もありません。彼は自分が食べたいものを注文することに終始しています。私たちは心の中で「今日は彼のおごりだから、あまり高いものを注文するわけにもいかないな…」と思いながら、遠慮気味に妻と注文していきます。


中国ではレジがないところも多いため、ホスト側が頃合いを見計らって「お会計(买单 mǎi dān)!」と店員に声をかけてくれます。ゲストはその場で自分の食べた分のお金を出すことは許されません。割り勘などあり得ないのです。


その日のお寿司屋さんでも私たちは「そろそろかな」と、友人が「お会計お願いします」と声を掛けてくれるのを待っていましたが、待てど暮らせどその時はやってきません。かといって、これ以上お寿司を頼むのも申し訳ないし、とうとう私のほうから「そろそろかな…」と声を掛けたら友人は「そうだね」と言って、いそいそと財布から自分の食べた分だけを私に渡してきました。


お寿司屋さんから出た友人は「美味しかったでしょ」と得意げでしたが、私と妻はどこか寂しさと物足りなさを感じていました。中国では、会計後にこちらが感謝を伝えると「そんな他人行儀はやめてくれよ(别客气 Bié kèqì)!」というやり取りが必ずあり、ちょっと相手との距離が縮まった感じがしていたからです。


この経験で私が伝えたいのは「中国人が寛大で、日本人がケチ」ということではもちろんありません。食事の支払いに関して両国ではカルチャーが面白いほど異なっているということです。


中国では一緒に食事をすることは相手との距離を縮める一種の儀式といっても良いでしょう。その場で招いた側が客のために支払いすることは「もはや私とあなたは他人ではない。家族同然の関係だ。」というメッセージでもあります。


それに対して、日本では誰かをおごる場合、ある種の「主従関係」を意味することが多いように感じます。上司と部下、先輩と後輩という明確な上下関係がない限り、誰かのためにおごることは相手を戸惑わせてしまうことすらあるのではないでしょうか?つまり、相手との関係を「縮める」ため、というよりは、相手との関係を「確認する」意味合いがあるように感じます。



割り勘(AA 制)の台頭

レストランの屋外のテーブルに座り、それぞれ違うものを食べながら会話する若い男女の3人組友達グループ

中国ではおごり文化が主流とはいえ、経済の発展や若者の自立意識の高まりにより、「割り勘(AA 制)※」が台頭してきています。


※割り勘のことをなぜ「AA 制」というのかには諸説ありますが、香港で「All Apart」の頭文字をとって「AA」と言われ始めたのが語源とも言われています。


個人的にも中国で何度か AA 制を経験したことがありますが、相手はいずれも若者たち、しかも北京など大都市の大学で学生時代を送った方々でした。中国人同士でもカップルや友人同士で少しずつ割り勘が一般的にもなっていると聞きます。


ほかにも習近平政権下では「食品ロス」が社会課題として取り上げられるようになり、2021年4月には「反食品浪費法」が可決されるなど、食べきれないほどの食事で相手をもてなす文化が下火になってきた点も関係しているかもしれません。


中国の主要都市の飲食店では、年間1,800万トンもの食品が破棄されており、これは年間3,000~5,000万人を養うことができる量に相当すると指摘されていました。「反食品浪費法」では、過剰な食べ残しをした客に対して、その分の処分費用を請求できたり、店側が大量に注文させた場合最大1万元(約16万円)の罰金が請求されるなどの措置が盛り込まれました。


こうした社会的変化はありつつも、これから中国に出張に行ったり、留学したりする予定があるなら、いまも中国で誰かと食事する際はおごり文化が主流であることは覚えておきましょう。




おごり文化にまつわるQ&A

深いグリーンの背景に、ピンクとカーキ、ブラウンの画用紙で作られた吹き出しとはてなマーク

Q:日本で中国人の友だちとご飯を食べにいくのですが、割り勘とおごり、どちらが良いですか?


A:いろいろな状況があるため、一概には言えませんが、すでにその友だちが日本に長年住んでいる場合は割り勘でも良いでしょう。ただ、その友だちが日本に来たばかりだったり、旅行で来たりしている場合には、相手は日本人のあなたがホストとしてもてなしてくれることを期待している可能性大です。値段が高い料理は必要ありません。日本について知ってもらいたいという思いで、とっておきのお店に連れて行って御馳走してあげてはいかがでしょう?


Q:中国で自分がホストになって中国人の友だちをおごるのは失礼ですか?


A:一般的に中国では地元で迎える側がホストになるので、ゲストがお金を出そうとすれば、相手の面子を傷つけることにもなりかねません。


面子について知りたい方はこちらのブログもチェックしてみてください。

中国人の「面子」は日本人の「空気」?!


しかし、中国で日本人であるあなたがホストになって中国人の友だちにおごってあげることは可能です。きっと、中国人の友だちはあなたの心意気に感激し、喜んでくれるはずです。その場合、前もって「今日は感謝の気持ちを込めてあなたたちに御馳走したい」と言っておいても良いでしょう。


ただ、日本の場合と異なり、中国人は御馳走してもらう金額で自分がどれだけ大事にされているかを見る傾向もあります。そのため、ファーストフードなどで御馳走することはかえって相手の面子を傷つける可能性があります。特に相手が社会的な地位がある人ならなおさらです。


意外に喜ばれるのは中国の日本料理店です。「うんちく」なども語りながら、楽しく相手に食事してもらえるように配慮しましょう。






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著者プロフィール


YOSHINARI KAWAI


2008 年に中国に渡る。四川省成都にて中国語を学び、約 10 年に渡り、湖南省、江蘇省でディープな中国文化に触れる。その後、アフリカのガーナに1年半滞在し、英語と地元の言語トゥイ語をマスターすべく奮闘。コロナ禍で帰国を余儀なくされ、現在は福岡県在住。


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