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執筆者の写真SIJIHIVE Team

食は中国にあり。多彩すぎる中国の食表現③~旨味炸裂!調味料の世界



中国の食が豊富な一つの理由は、それぞれの場所にしかない、さまざまな調味料とも関係しています。


中国で生活していたときの楽しみの一つは、スーパーではなく、地元の市場に行くことでした。そこには、見たこともない食材だけでなく、どうやって使うのか分からない調味料もたくさん。使い方を教えてもらって買ってみたものの、結局はあまり使うことなく、ゴミ箱行きになってしまったものも多々ありました…。


食を切り口に中国語の豊かな表現を「味わう」シリーズ第3回、今回は中華料理の調味料(中国語では「調料」ティアオリャオ)にスポットライトを当ててみます。



まず、中華料理の基本はなんといっても油です。中国のスーパーに行ってまずびっくりするのが油の標準サイズが大きいこと。日本の場合、サラダ油のボトルは大きいものでも1.5キログラムが標準です。


しかし、中国ではむしろ1.5キロのサイズは小さめで、3リットルや5リットルの油が標準サイズ…。


ここに油が「調味料」に含まれる理由があります。日本では「炒め物」というとき、健康のことも考えて、使用する油はできるだけ少な目にする方が多いでしょう。しかし、中国の炒め物「炒菜(Chǎocài)」は、どちらかというと、野菜や肉を油の中に「くぐらせる」イメージです。


油本来がもつ風味と、素材から出るうま味が一体となり、料理全体の味が豊かになります。このように、中華料理では油は非常に重要な要素であるため、農村では自ら絞って作る人たちも少なくありません。


中華料理の油にもさまざまな種類がありますが、よく使われるのは大豆、油菜、ごま、落花生であり、これらを四大油料作物と呼んでいます。ただでさえ脂っこいイメージがある中華料理ですが、時にはラード「猪油(Zhū yóu)」で炒めることでさらにコクを出します。


「火の料理」とも呼ばれる中華料理はアツアツでいただかないとおいしくないため、作り置きができません。ちなみに料理が冷めることは「凉(Liáng)」で表現し、「菜凉了,我来给你热一下吧(Cài liángle, wǒ lái gěi nǐ rè yīxià ba)」などと言います。意味は「料理が冷めてしまったので、私が温めてあげましょう」です。


醤油

続いて、中華料理に欠かせない調味料に醤油(Jiàngyóu)があります。やはりさまざまな種類がありますが、製造方法、原料、特徴から以下の6つに分類されます。


  1. 「醸造醤油」

  2. 「生抽(Shēng chōu)」

  3. 「老抽(Lǎo chōu)」

  4. 「醤油膏」

  5. 「蒸魚豉油(Zhēngyú chǐ yóu)」

  6. 「調合醤油」の6つに分けられるといわれています。


「醸造醤油」が一般的な醤油であり、「生抽(Shēng chōu)」は薄口醤油に近い醤油、「老抽(Lǎo chōu)」は濃口醤油に近い感じ、「蒸魚豉油(Zhēngyú chǐ yóu)」は広東地域の海鮮料理によく使われる甘口醤油です。


余談ですが、「醤油(Jiàngyóu)」を使ったネット用語も一緒に覚えておきましょう。「打酱油(Dǎ jiàngyóu)」という中国語表現を聞いたことがおありでしょうか?


もともと中国では醤油は量り売りだったため、人々は瓶などの容器を持って購入していました。このことを「打酱油」といいます。


しかし、今使われている「打酱油」は醤油を購入することとはまったく関係ありません。取り上げられている話題と「自分は無関係だ」という意思表示を表すときに使います。


なぜでしょうか?実は、2008年に香港のスター、エディソン・チャン(陳冠希)のスキャンダルについて、広州のテレビ局が広州の一般市民にインタビューをした際に「关我鸟事,我出来打酱油(Guān wǒ niǎo shì, wǒ chūlái dǎ jiàngyóu)=俺とは関係ないよ、だって醤油を買いに来ただけだから」と答えたことが由来だといわれています。


特に政治的にセンシティブな話題や、デリケートな話題などに対して一定の距離を保つ際に使われます。SNS などでもやりとりするときにもとても便利な言葉なので、覚えておくとよいでしょう。


最後に酢を取り上げます。酢もさまざまな種類がありますが、中国の四大酢と呼ばれているものに「白酢(Báicù)」「米酢(mǐcù)」「陳酢陈醋( chéncù)」「香酢(xiāngcù)」があります。それぞれの原料は穀物、米、高きび、もち米です。


中でも、個人的に最も気に入っているのが「陳酢( chéncù)」です。このお酢は中国山西省の省都太原市発祥で、三千年の歴史がある濃い色をしています。日本の黒酢と味わいはかなり異なり、山西省の人たちはどんな料理にもこの酢をかけて食べるようですが、絶品なのが水餃子との組み合わせです。


日本では見かけることがなかったため、寂しく感じていましたが、先日某スーパーで見かけ、狂喜乱舞して購入し(しかもお値段もリーズナブル)、さっそく家で水餃子をつくっていただきました。


陳酢(陈醋)の素晴らしいところは味だけでなく、栄養豊かなこと。高きび、米ぬか、水、ふすまを主な原料とした発酵食品で、その中には18種類以上のアミノ酸と、豊富なビタミンが含まれています。


ここで「酢」を使った表現も一つ覚えておきましょう。それは「吃醋(Chīcù)」です。


「吃醋(Chīcù)」とは、「酢を食べる」のではなく、「嫉妬する」という意味です。なぜそういうのかはいくつかの説があり、かつての唐王朝の昔話に由来するともいわれています。ただ、由来が分からなくても「嫉妬する」ことと「酸っぱい味」が結びついているのはイメージしやすい気がしますね。


まとめ


中国の調味料には他にもさまざまなものがあります。今ではネットでもいろいろと中華料理の調味料が買えるので、興味があったら試してみてください。


特に陳酢はおすすめです!


参考サイト:


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著者プロフィール


YOSHINARI KAWAI


2008 年に中国に渡る。四川省成都にて中国語を学び、約 10 年に渡り、湖南省、江蘇省でディープな中国文化に触れる。その後、アフリカのガーナに1年半滞在し、英語と地元の言語トゥイ語をマスターすべく奮闘。コロナ禍で帰国を余儀なくされ、現在は福岡県在住。


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