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執筆者の写真SIJIHIVE Team

ハワイ近代文化から生み出された言語、ピジン英語とは?

こんにちは!ハワイをこよなく愛する翻訳者兼フラ講師の板羽柚佳です。


今回は、多国籍な移民者を抱えることでも有名なハワイで、主に地元民(Loco)に浸透している「ハワイアン・ピジン英語」(通称:ピジン英語、または「ハワイ・クレオール英語」)とも呼ばれている、ハワイ固有の言語を取り上げます。歴史的な背景に触れながら、特徴的な発音方法や実際に使われている、実は日本人にもおなじみのワードなどをご紹介していきます。


目次


1. ピジン英語の起源

バックグラウンドに山、道路の両側にはたくさんの木々が並ぶハワイの大自然の風景。

ピジン英語の起源には、ハワイ諸島における多文化の融合が深く関わっています。19世紀、ハワイは重要な交易拠点となり、日本、中国、フィリピン、ポルトガル、韓国など世界中からの移民者が集まりました。各国の異なる言語と文化が交わっていく中で、文法などを気にせず、簡単に意思の疎通を図るために生まれた新しい言語が「ピジン英語」です。


この言語は、特にプランテーションで働く地元民や移民労働者のコミュニケーション手段として発展し、ハワイの多文化社会に根付きました。多様な背景を持つ人々が「ピジン英語」という共通の言語を持つことで、コミュニケーションが円滑になり、共感を生む大きな役割を果たしてきました。現在では日常的に使われる言葉としてハワイの人々の生活の中に溶け込んでいます。


2. 日本人には発音しやすい?ピジン英語の発音

赤のヴィンテージカーの車内のダッシュボードに飾られてるヴィンテージのフラガールのお人形とミラーからぶら下がっているハイビスカスのアクセサリー

ピジンのアクセントは通常の英語よりもどちらかというと明確に発音をする日本語に近い特徴があります。


例えば、 「the」は「da」、「th」の音は「t」と発音されるので、「thing(シング)」 は 「ting(ティング)」になります。さらに、子音の発音にも特徴があります。そもそも古代ハワイ語は「r」の発音を持たない言語であったため、「ah(アー)」に近い発音で表現するようになりました。これにより、「water」 は 「watah」、「parking (パーキング)」は「pahking」となり、「r」の舌を巻く発音が難しい日本人には発音しやく馴染みやすい英語となりました。

また、サンダルの意味を表す「slippers (スリッパー)」も、ピジン英語になると「slippahs」と「r」の発音がなくなり、日本語の「スリッパ」に近い発音となります。


3. 実はピジン語である「Aloha」と代表的な表現

ハワイの建物の壁に飾られたALOHAとサーフボードに書かれた看板。その下にはグラフィティが描いてある壁がある。

「Aloha」

ハワイで最もよく使われるな挨拶の1つで、愛、尊敬、友情など、たくさんの意味を表す言葉「Aloha」(「Aloha」のそれぞれのアルファベットには、実は5つの深い意味合いがこめられているのですが、それについてはまた別の機会にでご紹介します)。「Aloha」は、通常は「こんにちは」や「さようなら」の意味で使われています。ハワイ文化の象徴として、広く愛され使われているワードですね。


「Brah」 

「Brother」の短縮形で、友人や仲間を指す言葉。ハワイの若者たちの間でよく使われ、親しみやすいコミュニケーションの一部となっています。また「Brother」が訛った「Braddah」は、見ず知らずの人を呼ぶ場合にも親しみを込めて使われています。


「Grindz」

食べ物や料理を指す「Grindz」は、「Come get da ono grindz.(美味しいご飯を食べにおいで)」のように使われ、美味しい食事を皆で共有するというハワイの大切な文化を反映しています。


「Loco」

日本人にも耳馴染みのある、地元民という意味の「Loco」は「Local」から派生したものです。


「Da kine」

「それ」「あれ」のような意味の、「Da kine(That kind)」。例えば、「You know da kine?」=「あれ知ってる?」という風に使われます。


「Howzit」

「Howzit」は、「How’s it going?」や「Hi」のように、「調子どう?」「元気にしてる?」といったカジュアルな挨拶として使われています。


4. その他のユニークなピジン語の表現

ハワイの島でベンチに立っている鶏と、芝生と木々のバックグラウンド

ピジン語には、上でご紹介した代表的な表現以外にもユニークなものが多くあります。


「鳥肌」は、英語では「Goose bumps」ですが、ピジン英語では「Chicken skin」といいます。「鳥肌」を直訳した感じで日本人からすると分かりやすいですね。


また、「たくさん」を意味する「a lot」や「plenty」は、ピジン英語では「choke」となり、おそらく「喉を詰まらせるほどたくさん食べる」というところから使われるようになったようです。


「お喋り」や「雑談をする」は「chat」ですが、ピジン英語では「talk story」となります。もし英語で「I need to talk story about something to you.」なんて言われたら「え!!何かあった?」となりそうですが、ピジン英語ではそんなにシリアスな意味合いはありません。


5. ハワイ語や日本語由来のピジン英語

ロードサイドでハワイの旗を掲げる人々と、芝生で椅子に座っている人々と、リンゴをかじりながらカメラを見ている赤ちゃん

ある歴史的背景から、ハワイ語のみで会話ができる人はかなり少数となっていますが、ハワイ語の単語は現在も英語に混ぜて日常的に使われています。


その中の一つに、「終わる」を意味する「Pau」があり、「When are you pau?」(何時に終わるの?)」という様に使われます。レストランやバーの表看板で見かける「Pau hana Friday(仕事が終わった金曜日)」は、日本語でいう「華金」といった感じでしょうか?


その他には、「Puka shell(穴の開いた貝殻)」や「Lanai((ベランダ)」などがあります。ベランダを意味するラナイはハワイに行かれたことのある方なら耳にしたことがあるかもしれませんね。


また、「Bango(番号)」は「number」のことで、サトウキビ農園では各国から入植した働き手を、人名ではなく、全て数字(番号)で管理していたことからピジン英語として浸透したようです。当時の移民の皆さんの厳しかった状況を察することのできるワードの一つです。


また最近はアメリカ本土でも使われているようですが、「Shoyu(醤油)」「Bento(弁当)」「Musubi(おむすび)」「Okazu(おかず)」なども、ハワイでは日常的に使われている日本語起源のピジン英語です。街中のテイクアウトのお店の看板を眺めているとこれらのワードによく遭遇します。街歩きを楽しむ際のエッセンスにもなりそうですね。


ハワイで使われているピジン英語の用語集
ハワイで使われるピジン英語の例

引用元:Hawaiian Pidgin 101


いかがでしたか?ピジン語の歴史的背景や、皆さんも一度は耳にしたことがあるかもしれない、ハワイで日常的に使われているピジン英語をご紹介しました。


移民の歴史を垣間見ることのできるピジン英語、興味深いですよね。ハワイに来る際は是非、Locoたちの会話に耳を澄ませてみてください。観光地ハワイではない、何かを感じとれるかもしれません。次回は、近代ハワイの歴史をもう少し掘り下げながら、実はとても深いピジン英語やハワイ語についてご紹介しす。


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著者プロフィール


YUKA ITAHA


テレビラジオ業界でナレーターとして25年、フラ教室主宰15年とエンタメ業界一筋で生きてきたが、コロナ禍をきっかけに長年の夢だった翻訳業務を開始。

ハワイへは年に数回渡航。日々変化していく生きた英語に触れながら、

異文化間の思考の違いや取り組み方の違いを肌で感じ、

その違いを相互理解しながら埋めていくための一助となるべく、目下、邁進中。



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