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日本とここまで違う!中国の住宅に見る価値観の違いとは?



ここ数年、中国の住宅需要が低迷する一方で増えているのが賃貸物件の増加です。2019年の賃貸住宅の利用者は中国全体で約1.9億人だったのが、2022年には2.4億人超、そして2030年には2.6億人を超えると予想されています。


かつては結婚の「三大件(sāndàjiàn、三種の神器)」として必須だといわれた持ち家(あと2つは車と結納金)ですが、若者たちの就職難や価値観の変化とともに中国の住宅事情も変化しています。


今回は日本と中国の住宅を比較し、そこから垣間見える価値観の違いについて分析してみたいと思います。



中国の「大家さん」事情



筆者はかつて中国に住んでいた頃、何度か家探しを経験しました。家探しは日本と同じで、ネットで物件情報を検索し、お目当ての間取りやデザインを見つけたらページに記載されている不動産業者の担当者に電話をして、実際に内見させてもらうという流れです。


ただ、日本と違うのは中国の賃貸住宅はほとんどの場合、個人の大家さんとの契約だという点です。冒頭で述べたように近年、その流れが変わってきており、不動産会社が一括して借上げて賃貸するサブリース企業が増えているようですが、それもまだまだ深センや上海、北京などの一部の大都市での話です。


日本で大手不動産会社と賃貸借契約を締結する場合、マンションやアパートでは物件の間取りやデザインはほぼ同じです。それに対して、中国の場合は大家さんとの契約になるため、物件のデザインもさまざまです。


例えば、新婚の夫婦が購入したばかりの物件は内装がピンクや赤を基調にしていて、日本人の私たちからするとちょっと落ち着きませんでしたし、小さな子どもが住んでいてやむなく賃貸することになった家族の家の壁にはキャラクターのシールがたくさん貼ってあったり、クレヨンの落書きがされていたりすることも。


内見の際は大家さんも立ち会ってくださることも多く、物件のデザインやリフォームに対する思い入れを語ってくれます。


日本だと賃貸収入を得るために物件を購入する人たちも少なくありませんが、中国は日本に比べて「住宅価格対家賃比率」が高いといわれています。つまり、賃貸用途で住宅を購入しても、家賃収入がなかなか購入金額を上回りません。


ある調査によると、家賃収入によって住宅購入金額を回収するのに60年以上かかるともいわれています。しかも、中国は物件に対して「所有権」が認められるのではなく、あくまでも「最長70年の使用権」が認められるに過ぎません。そう考えると、ある程度の富裕層で複数の不動産を保有しなければ、賃貸目的の物件はほとんど収入にはつながらないということになります。



中国での住宅購入は内装工事もセット

日本では住宅を購入する場合、一軒家ならまだしもマンションの内装をまるごと自分たちで設計することはあまりありません。


しかし、中国の場合は逆です。都市部で物件を購入する場合、ほとんどがマンションですが、内装工事が済まされて売り出されることはほぼありません。コンクリ打ちっぱなしの「毛胚房(Máo pēi fáng)」と呼ばれる、手つかずの「空間」を購入し、そこから配管、電気、クロス貼りなど一切の内装工事を自分たちで業者を探して行います。結果として家には大家さんの価値観や美的感覚が否応なしに映し出されるというわけです。


こうした背景があり、賃貸される物件のほとんどは個人やその家族が住むことを前提にして設計された思いのこめられた住宅なのです。



中国と日本の間取りの違いとは?


中国の住宅は日本の間取りと異なる点がいくつかあります。以下では実際に内見をしている気分で、中国の住宅を体験してみましょう。


まず、ドアを開けるとすぐに気づくことがあります。中国の住宅ではほとんどの場合、靴を脱ぎません。そのため、床は大理石風のタイルで、汚れてもモップで掃除しやすく設計されています。そして、靴を脱がないため、日本のような玄関はありません。ドアを開けたらすぐにリビングルームがあり、ソファやテーブル、テレビなどが置かれています。


ちなみに上述したように大家さんは基本的に自分たちが住むことを前提にして物件を購入し、リフォームしているため、家具や電化製品もすべて揃っています。いずれ中国を離れることを前提にした外国人にとっては新たに買いそろえる必要がないため、有難い限りです。


日本ではダイニングとキッチン、リビングを一体化させ空間に広がりを持たせる傾向が強いですが、中国ではキッチンとリビング、ダイニングはきっちり分けられていることがほとんどです。その理由はお分かりかと思います。中国では油を豪快に使った料理が多いため、キッチンを独立させておかないと掃除が大変になってしまうからです。


お風呂を見てみましょう。ほとんどの場合、浴槽は設置されておらず、シャワーとトイレは同じ空間にあります。今、日本で生活していると冬に体が冷えたときに浴槽があるのは有難いとつくづく思いますが、中国で生活しているときは慣れてしまい、そこまで恋しいとは思わなかったのが不思議です。



中国の住宅デザインから学べること



中国の住宅事情ゆえにリフォームやリノベーション、施工業者は多くの経験やノウハウを蓄積しています。また、設備や工場のスケールも桁違いです。


例えば、日本では棚を作るにしても工場のスペースの関係で棚板を数メートル単位でカットせざるを得ないため、壁一面に棚を据え付ける際、どうしても板の切れ目などが目立ってしまいます。それに対して中国では大規模な工場でより長く、より大型の板を加工できるため、つなぎ目のないシームレスなデザインが可能になり、より高級感を出せるのです。


一から設計となると、当然それだけコストがかかりますが、中国の人たちにとって家はまさに自分の面子を象徴するようなもの。手を抜くわけにはいきません。


日本人にとって家は他の人に見せるためというより、自分がゆったりくつろぐための場所という方も少なくないでしょう。それだけに住宅全部というわけにはいかないにしても、どこか一部や一室だけでも自分や家族の思いがこもったとっておきの空間を創造するのも良いかもしれません。






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著者プロフィール


YOSHINARI KAWAI


2008 年に中国に渡る。四川省成都にて中国語を学び、約 10 年に渡り、湖南省、江蘇省でディープな中国文化に触れる。その後、アフリカのガーナに1年半滞在し、英語と地元の言語トゥイ語をマスターすべく奮闘。コロナ禍で帰国を余儀なくされ、現在は福岡県在住。




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