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作曲にも AI 活用?実際に AI 生成した歌詞を添削してみた


黒い背景の中に浮かぶオレンジ色に光る五線譜のようなラインとト音記号と音符

現在は AI が大きく進化しているため、無料の AI ツールや作曲アプリでも高クオリティの歌詞や音楽が作成できます。


音楽活動をしている方や最新 AI 技術に興味がある方は、AI の作成した歌詞がヒット曲になり得るのかどうか気になるのではないでしょうか。


もしも、AI が作成した歌詞がヒット曲に相当するクオリティであるなら、作曲活動に取り入れたいと考えるアーティストもいるかもしれませんね。


そこで、本記事では実際に AI が作成した歌詞を、音楽活動歴15年の現役アーティストである私が添削してみます。


最新 AI に「2024年にヒットする曲の歌詞を作成して」と頼んだら、はたしてどのような歌詞を作成するのでしょうか。


音楽好きな人はもちろん、最新 AI に興味がある方もぜひチェックしてみてください。



AI アプリは作曲の手助けになる


黒いボードの上に並ぶ様々なアプリのロゴ付きボタン

作曲活動に AI を活用すると聞いても、ピンとこない方もいるかもしれませんね。

AI を作曲に活用する方法は、大きく分けて次の2種類です。


  • AI 作曲アプリでメロディや伴奏を作成する

  • AI ツールで歌詞を作成する


音楽制作に AI を活用して得られるメリットは主に次の4つです。


  1. 制作時間を短縮できる

  2. 発想の引き出しが増える

  3. スキル面のサポートができる

  4. 市場ニーズの分析ができる


AI はコード進行、リズム、メロディ、歌詞を短期間で自動生成するため、制作時間を短縮できます。AI は多くのアイディアを提供してくれるため、自身の引き出しにはない音楽的な発想を得られる可能性もあるでしょう。


また、AI 作曲アプリは自動的に音楽トラックを作成してくれるので、打ち込みや楽器演奏のスキルがない方でも、高クオリティの音楽を簡単に作成できます。さらに AI は音楽市場のトレンドやリスナーの好みを分析し、市場のニーズにあった楽曲を戦略的に作成可能です。


個人的には、音楽制作においての AI の最大の魅力は「短期間で大量の楽曲を作り出せること」だと思います。実際に AI 作曲アプリを使用してみると、クオリティの高い曲が数秒〜数十秒程度で作成できます。


また、AI で生成した作品には著作権が発生しないので、プロの方でも著作権を気にせずに創作活動に活かせるでしょう。プロトタイプの曲を量産してパターンを比較したりインスピレーションを得たりなど、さまざまな用途で活用できます。



実際に AI が作成した歌詞を紹介


テーブルの上に置かれた開いた古い本

「最新 AI はすごい」とはいうものの、はたしてヒット曲が生まれるほどのクオリティで生成できるのでしょうか。そこで実際に最新 AI に楽曲の歌詞を作成してもらい、現役でアーティスト活動をしている私が添削してみます。


今回は「AI ツールが趣味や遊びで作曲する場合に役に立つか」ではなく「プロとして曲をヒットさせたいアーティストが AI ツールを活用できるのか」という視点で試していきたいと思います。


漠然とした歌詞だと現在ヒットしている曲の歌詞と比較しづらくなりそうなので、テーマは時代を問わずに人気の「恋愛」に設定しましょう(令和のヒットチャートを見ても恋愛をテーマにした曲は多くあったので)。


AI ツールは OpenAI が提供する最新 AI「ChatGPT-4」を使用します。

「ChatGPT-4」には次のような文章でお願いしてみました。


あなたはプロの作詞家です。近年のヒット曲に使用されている歌詞の特徴を考慮しながら、2024年にヒットする曲の歌詞を作ってください。テーマは「恋愛」でお願いします。ー


上記のプロンプトを打ち込んでから、10秒程度で歌詞が完成しました。歌詞の作成スピードでいえば、AI の圧勝ですね。私は1曲の歌詞を作るのに少なくとも数日間はかかるので……。


それでは早速「ChatGPT-4」が作成した歌詞を、ブロックごとに見ていきましょう。


タイトル~A メロ


「タイトル」「A メロ」は、曲のテーマや物語の始まりを表現する大事なパートです。


タイトル:星空の下で


A メロ:

君と初めて出会ったあの日 街灯も消える夜更けに

言葉よりも深く話した 二人の影が月に隠れて


タイトルは「星空の下で」です。少し王道でベタな気もしますが、曲のテーマを端的に表しているのならアリだと思います。


ちなみに令和のヒットチャートでは英語や4文字前後のシンプルな名詞で表したタイトルが比較的多く見られるので、日本語であるなら細かいですが「星空の下」「星空」とかですと、字面的にはもう少し今時っぽくなるかもしれません。


続いて A メロです。曲の物語は「恋がはじまる瞬間」から始まります。

注目の歌詞は「言葉よりも深く話した」ですね。「言葉で会話するよりも深く、君と心を通わせた」という意味でしょうか。AI でも比喩を使った歌詞を作成するのは興味深いですよね。


「二人の影が月に隠れて」も「外」「夜」「月」などの風景を描写しながら、二人っきりの世界や空間が連想できてよいと思いました。


B メロ


続いて B メロです。B メロはサビに向かって盛り上がるためのパートです。物語調の歌詞であれば、主人公の気持ちを際立たせる歌詞が入ったりします。


B メロ:

どんな言葉も足りなくて ただ、君の手を握るだけ

ふたつの心が溶け合う この瞬間に永遠を感じる


「どんな言葉も足りなくて ただ君の手を握るだけ」は、A メロの「言葉よりも深く〜」の部分をさらに細かく描写した歌詞ですね。「言葉では伝わらないから行動で気持ちを示す」という主人公の心情がわかりやすく表現されていると思います。


「心が溶け合う」や「瞬間に永遠を感じる」など、恋心を表す繊細な表現も散りばめられています。人間が考えた歌詞だと思えば特に珍しくはないのですが、AI が作ったと考えるとすごいような気がしてきますね。


サビ~大サビ


いよいよサビ~大サビです。

曲で一番伝えたい想いや物語の盛り上がりがピークになるパートです。


サビ:

星空の下で踊ろう 君という宇宙の中で最も輝く星を見つけたよ

風に吹かれながら、君と歌う 愛はこの夜に静かに佇む


大サビ:

星が落ちても、朝が来ても 君という光は消えない

永遠の愛を誓うよ 星空の下、ずっと二人で


サビの冒頭でタイトルである「星空の下で」が出てきました。「曲のテーマ」はサビやタイトルに入れると、リスナーにも世界観が伝わりやすくなりますね。「星空の下で踊ろう」はキャッチーなフレーズでよいと思います。


「君という宇宙の中で最も輝く星をみつけたよ」も比喩ですね。君=宇宙なのであれば、最も輝く星は君ではなく「愛」や「未来」なのかもしれません。


大サビの「星が落ちても〜君という光は消えない」もきれいな言葉です。「夜が明けて星という光は消えても、君という光は消えないよ」という意味でしょうか。


間に差し込まれている「朝が来ても」は朝日のイメージが浮かんで、せっかくの星空のロマンチックな風景を崩してしまうのと「星の光」と「君という光」の対比が薄れてしまうので、個人的には省略してもよいかなと思いました。


ただ「朝」という別の世界や「太陽」という別の光が現れても、君という光は消えないという意味が込められているなら「朝が来ても」はあってもよいですね……。歌詞の世界は難しいです。


最後は「星空の下で永遠の愛を誓う」描写で、曲のクライマックスを締めています。



総評:現段階ではすべてを AI で完結させるのは難しい


ロボットの頭部が置かれたAI回路を操作するロボットハンド

最新 AI が作成する歌詞はいかがだったでしょうか。たったの10秒程度でテーマに沿った歌詞が作成できるのはすごいですよね。


実際に AI が作成した歌詞のクオリティについて、私の総評は次のとおりです。


  • 歌詞の出来はよくも悪くも普通

  • 発音や韻、言葉数などは考慮していないので、そのまま使用するのは難しそう


ところどころ感心する歌詞はあったものの、全体の出来としては「よくも悪くも普通」だと思います。AI で作る歌詞は平均的なものになるので、どうしても全体的にベタな印象になっているのは否めない気がします。


AI が作成した歌詞がヒット曲になる可能性は0ではないですが、人の心を打つような歌詞を作成するのは現状では難しいかもしれません。


また、AI で作る歌詞ではまだ発音や韻、言葉数を完全に意識するのは難しいように思います。特に現代のヒット曲には聴いていて気持ちのよい発音や韻が求められるため、AI が作成した歌詞を曲に落としこむためには発音や韻、言葉数を調整する必要があるでしょう。


実際にこの後「ChatGPT-4」に「人の心を打つような歌詞を作成して」「気持ちのよい発音や韻、言葉数を意識した歌詞を作成して」とお願いしてみましたが、先ほどの歌詞から大きな変化は見られませんでした。


AI が作成した歌詞を参考にする、もしくはインスピレーションのきっかけにすることは十分できると思います。

ただ、現段階では作曲のすべての過程を AI で完結させるのは難しいかもしれません。



AI を活用すると、よりクリエイティブな表現が可能になる


古いピアノと楽譜

現在は AI アプリや作曲ツールも進化しているため、アマチュアでもプロ同等のクオリティが高い楽曲を作成できるようになりました。


楽曲のクオリティで差がつきづらくなった近年では、アーティスト自身の想いがどれだけ曲に込められているかがさらに問われます。アーティストは曲に込めたい想いを最前線に置きつつ、AI の力を借りて曲の魅力を最大限に引き出すとよいでしょう。


AI が提案する新しい視点や技術を上手に組み合わせると、アーティストの表現の幅も広がる可能性があります。



まとめ


AI アプリやツールは短期間で多くの作品を生み出せます。

アーティストは AI と上手く付き合い、自身のクリエイティブな表現を最大限に発揮しましょう。


また、クリエイティブな作業に没頭していると、ついつい客観的な視点が薄れてしまう場合があります。


作業が行き詰ったときは AI の力を借りると、自身では気づけなかった表現方法や発想について教えてもらえるかもしれませんね。


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著者プロフィール


TAKUTO SHIOYA


高校卒業後、音楽の専門学校で作曲・編曲を学ぶ。複数のバンド活動を経て2016年からソロで弾き語り活動を開始。ハイエースで10日間車中泊をしながら中国・四国地方ツアーをおこなったりと、現在も精力的にライブ活動中。大手メディアの Web ライター兼編集者としての顔も持ち、新潟、静岡、神奈川、埼玉、沖縄など移住拠点を定期的に移しながら、日々感じたことを記事にしている。


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