フリーランスは経済的に不安定だと考えられがちですが、実は適切な計画性と行動力があれば、安定した収益性とキャリアを築くことができます。今回は、フリーランス歴25年、翻訳者歴4年のシングルマザーである筆者が、翻訳者に限らず他業種でもフリーランスとして生きていきたいと考えている方々へ向けて、効果的な財務管理のコツや、心の安定を保つための実践的なヒントを、海外発信の記事などを参考に提案していきます。
経済的な安定をはかるには?
「フリーランスは経済的に安定しない…」。ときどきこういった言葉を耳にしますが、長らくフリーランスとして生きてきた筆者からすると、むしろ何にも縛られず自由にお金と時間の管理ができ、金銭的にも精神的にもとても安定した毎日を送れている…というのが正直な感想です。
確かに、フリーランスは従来の雇用形態とは異なる財務管理を要しますが、適切なアプローチで安定した収入を得ることは十分に可能です。ビジネスとプライベートをしっかりと分け、強固な財務基盤を作り、人とのつながり(ネットワーク)をしっかりとした意図のもと構築していくことで、フリーランス特有の不確実性を軽減し、心もお金も安定した日々を送ることができます。この記事では、そのヒントを8つの項目に分けてお伝えしています。
目次
1. 収入源の分散
フリーランスとして経済的な安定を確保する最も効果的な方法の一つは、収入を分散させることです。一つのクライアントに依存することは非常にリスクが高く、そのクライアントのプロジェクトが終了したり、予算が減らされたりすると、収入が激減する可能性があります。さまざまな業界の複数のクライアントと仕事をすることで、リスクを分散し、より安定した仕事の流れを確保することができます。
また、積極的にネットワーク(人脈)を広げ自分のサービスを売り込むことで、より幅広い業種のクライアントと繋がりができ、多様なポートフォリオと強固な顧客基盤を築くことが可能です。これに加え、技術系、法律系、クリエイティブ系など、請け負う翻訳(またはその他業務)の種類を多様化することで、収入が安定するだけでなく、スキル向上にも繋がります
2. 適切な料金設定と管理
適切なレート設定は、経済的な安定を確保する上でとても重要です。業界標準をリサーチし、自分自身のスキルと経歴などを加味してレートを決定していきます。まずは、関わる分野や地域での翻訳サービスの相場を把握し、競争力を保ちつつ適正な価格を設定しましょう。そして、提供する業務内容を料金に反映させます。これまで培ってきたスキルを報酬金額にしっかりと比例させることがポイントです。
日本人は謙虚すぎてここが苦手な方が非常に多いように感じます。あなたの料金設定が今後、新しく参入してくる人たちのスタンダードとなっていきますので、業界の質の底上げをしていく意味でも、適正な価格設定が大切です。
また、金額交渉の際は、自分が持っている専門知識に対して十分な報酬が支払われるようクライアントとしっかり話し合いましょう。ここも奥ゆかしさを美徳とする日本人にとっては苦手なところかと思いますが、自分の価値を一番理解しているのは自分自身です。自信をもって交渉に当たってください。
3. キャッシュフロー管理の改善
キャッシュフロー管理が効果的にできると、心の安定の度合いがかなり変わってきます。いくら稼ぐかだけでなく、収益をどのように管理し配分するかが重要です。報酬を受け取る際には、ビジネス専用の口座を使いましょう。これにより、収益を明確に把握し、事業経費をより効率的に管理することができます。また、その口座から毎月一定の給与を自分自身に支払います。こうすることで規則性が生まれ、プライベートの予算管理にも役立ちます。ビジネスとプライベートをしっかりと分けて財務管理をすることで、売り上げに多少の変動があったとしても不安定感は多少拭われます。
さらに、収益の一部を税金対策として積み立てることも大切です。フリーランス翻訳者は基本的に源泉徴収後の金額を報酬として受け取ることが多いので、市県民税や消費税などの支払いに備え、総売上額の2割ほどを用意しておくと確定申告後の納税に焦ることがなくなるので安心です。
4. スケジュールの確認と確定
フリーランスたるもの、自分の毎日を計画するのも重要な仕事の一部です。こうすることで、時間を効果的に管理し、心に安定感をもたらすことができます。仕事、休憩、個人的な活動のための時間を確保して毎日の仕事の流れを作り、生産性とワークライフバランスをうまく維持しましょう。また、個人的な予定や予期せぬ変更に対応できるよう、柔軟性や余白を持たせておくことも忘れずに。
加えて、フリーランスになるとどうしても仕事とプライベートの垣根があいまいになり、「休む」ということを忘れてしまいがちですが、週に1~2日程度はしっかり休む日をつくりましょう。勤勉で相手思いの民族性からついつい休み返上で突貫の業務を受けてしまったり、金銭的不安から無理をしてしまうこともありますが、結果的に体調やリズムを崩してしまったりして、パフォーマンスの低下につながることも。フリーランスは身体が資本です。安定した仕事を提供できるよう必ず休みを取ることを意識してください。
5. ネットワーク(人脈)の構築と維持
翻訳業界のみならずさまざまな業界で人間関係を築くことは、サポートを受ける機会や受注のチャンスを広げ、心の安定にもつながります。オンラインフォーラムやソーシャルメディア、地域のミートアップや異業種交流会などを活用し、他のフリーランス翻訳者や各業界のプロフェッショナルと積極的に知り合っていくことをおすすめします。
構築した人脈を活用し、ビジネスの機会を共有したり、アドバイスや紹介を受けたりすることで、横のつながりを感じながら業務を遂行することができます。情勢も含め、不確かなこの時代にこそ、自ら足を運び時間を注いで構築した人脈は、むしろお金よりも信頼できる貴重な財産だと言えるかもしれません。
6. 貯蓄と投資
予期せぬ出費や低収入の時期をカバーするための緊急用資金を作っておきましょう。すぐに引き出せる口座に少なくとも3~6か月分は貯めておくといいでしょう。専用の口座を作っておくと貯蓄の状況を一目で把握でき安心です。
また、フリーランスには当然ながら退職金制度がないため、早めに退職後の資金を貯め始めることをおすすめします。ちなみに筆者は株式運用などがあまり得意でないため、人脈をたどり、安心できる担当者と保険会社を選定し、変額個人年金保険で毎月コツコツと積立てています。何歳まで仕事をするのか、どのくらいの年収を得ているのかを考えつつ、運用利益が加味されるものを採用していくと無理や無駄がないのかなと思います。
7. 財務記録管理
会計ソフトやスプレッドシートなどを使って、日々の財務取引を記録していきましょう予算編成、納税準備、財務分析などの財務管理もフリーランスが通るべき道の一つです。定期的に財務データを見直し、傾向を把握して収益性を評価しながら、十分な情報に基づいた意思決定を行えるよう自分を鍛える姿勢も必要です。
ちなみに筆者は翻訳業務以外にも複数の業務を抱えており、管理が複雑なため、確定申告も含め日々の財務管理を税理士にお任せしています。多少の手数料はかかりますが、その道のプロにお任せするわけですからこれ以上に安心なことはありません。手数料ではなく安心料を支払っていると捉えると気持ちよくお願いすることができます。
8. 自分への投資
自分のスキルや知識への投資は、収入の増加やキャリアアップにつながります。スキルや市場性を高める講座を受けたり資格を取得し、専門能力の開発のためにどんどん自己投資を行いましょう。これにより、報酬の高い顧客を引きつけるだけでなく、ビジネスを拡大するためのツールやマーケティング戦略も構築していくことができます。
また、情報で溢れかえる現代では、適切に情報を選別するための選択眼も鍛えていく必要があります。参考意見なども取りいれながら、自分に合ったことを採用していきましょう。
まとめ
フリーランスとして経済的な安定を得ることは、適切な戦略と考え方次第で十分に可能です。収入の多様化、効率的な料金管理、キャッシュフローの改善、そして成長への投資を行うことで、フリーランスとしての安定したキャリアを築くことができます。
安定を維持するだけでなく、活動も度胸もダイナミックな個人が活躍する世界で自分らしく幸せに生きるべく、今回の記事が何かのきっかけや参考になれば幸いです。「自分の人生の舵は自分で取る」フリーランスだからこそ得られる経験を、本記事を読んでくださってみなさんとともに味わいあえたら嬉しいです。
参考記事:
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著者プロフィール
YUKA ITAHA
テレビラジオ業界でナレーターとして25年、フラ教室主宰15年とエンタメ業界一筋で生きてきたが、コロナ禍をきっかけに長年の夢だった翻訳業務を開始。
ハワイへは年に数回渡航。日々変化していく生きた英語に触れながら、
異文化間の思考の違いや取り組み方の違いを肌で感じ、
その違いを相互理解しながら埋めていくための一助となるべく、目下、邁進中。
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