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執筆者の写真SIJIHIVE Team

実は深い翻訳業界㉗~海外からの支払いって大丈夫?


札束と電球を持つ4本の手と黄色のバックグラウンド

翻訳者さんの中には、海外の会社やエージェントと契約されている方も多いと思います。既に信頼関係が築かれている場合はさておき、初めて取引する場合、「海外からちゃんと報酬が支払われるの?」「支払われるのはドル?円?ユーロ?」などの心配が付き物です。


そこで、今回は弊社の実際の経験やこれまでの傾向をもとに、海外からの支払いについて解説いたします。といっても、弊社が海外取引事情の全体像を把握している訳ではなく、あくまでも一例として述べているに過ぎないことをご承知おきいただければと思います。


海外からの支払い通貨はどうなる??

海外通貨の札とコインと地球儀のキーホルダー

まず、多くの方が気になる一番のポイント、支払い通貨について説明しましょう。


結論からいうと、円建てで払われるか、現地通貨(ドル、ユーロ、元など)建てで払われるかは相手次第です。弊社の経験上、アメリカやヨーロッパ、中華圏の会社の場合、ドル(ヨーロッパでは一部ユーロ)での送金が多いようです。


例えば、3,000ワードの翻訳案件の報酬が原文1ワードあたり0.15米ドルだとしましょう。無事に納品できれば、相手から450米ドルが振り込まれることになります。振り込まれる際の手数料は銀行振込か、PayPal などの支払いツールを使用するのかなどによって変わります(支払い方法については後述)が、日本の銀行口座に送金される際に手数料が引かれて円に両替して入金されるため、そのときの為替レートによって受け取る金額が変わることになります。


例えば、2023年8月末に1ドル=145円のタイミングで受け取れば(手数料は計算しないものとします)、450ドルは65,250円です。しかし、仮に2021年2月時点であれば、1ドル=105円でしたので、45ドルは47,250円になります。為替レートによって差額が18,000円にもなるわけです。


円安ドル高においてはドル建てで受け取れるのは嬉しいことですが、それがいつ逆転するか分からないのが、外貨建てで受け取るメリットであり、デメリットでもあります。


また、弊社のクライアントの中には、仮想通貨・メタバース・Web3系の企業も含まれており、仮想通貨で支払いたいと申し出られたこともあります。「仮想通貨でいただいても変動リスクが高いし…」とか「ウォレットを持っていないので」などと断ろうものなら業界事情に精通していないと思われるため、ウォレットを開設した経緯があります。同様の業界の企業と取引する場合には、少なくともウォレットを一つ持っておくと良いでしょう。


海外からの支払い方法は??

はてなマークのサインを掲げる女性

次に海外の会社やエージェントからの支払い方法についてですが、弊社の経験上、中国・台湾の会社は PayPal がメインで、アメリカ、ヨーロッパ、中東地域などの会社はマネーロンダリング対策、コンプライアンスの観点から銀行口座への為替送金が多いように感じます。


「銀行送金だと時間がかかるのでは」と思われるかもしれませんが、送金から着金までほぼ1日で完了するため、そんなに待たされる訳ではありません。しかし、時に銀行の担当者から送金目的や金額確認のために電話がかかってくることはあります。


ただ、為替送金のデメリットは銀行手数料が高額な点です。特に少額案件の場合、手数料を差し引くと利益がほとんど残らなくなってしまうケースもあり、そうした時点を回避するために少額の場合は PayPal、一定の金額を超えたら銀行送金をするなど、金額によって支払い方法を分けている会社もあります。


アメリカの場合、中にはクレジットカード払いを好む会社もあります。弊社の場合、Stripe

のアカウントを保有しているため、それを利用して請求書を作成し、クレジットカード払いができるリンクをクライアントに送信して決済してもらったこともあります。


PayPal だと電子メールだけでアカウントが開設できますし、1回の送金手数料も数百円で済みます。また、ひとまずドル建てでプールしておいて、為替レートの動きを見ながら日本の口座に入金できるため、翻訳者としてはありがたい限りです。しかし、前述したようにアメリカ、ヨーロッパの多くの翻訳会社はマネーロンダリング対策やコンプライアンスの関係で PayPal を使わないことも多いのが難点なのです。


海外の会社に請求する方法は?

デスクに座る女性が請求書を見ながら電卓で計算している

海外の会社宛でも請求方法は国内の取引先と同じで、ほとんどの場合、請求書をこちらで作成して、PDF ファイルをメールに添付して送ります。


エージェント系の翻訳会社の場合、個々の翻訳者専用にマイページが発行できるオンラインサービス(Plunet など)を使って、案件内容や金額を確認して請求書をアップロードすることもあります。


海外との取引って…危険?


考える人のオブジェと木の壁のバックグラウンド

最後に、何となく付きまとう不安、つまり「海外の会社と取引すると振り込まれなかったり、送金が遅れたりするのでは?」という点について弊社の経験をご紹介します。


弊社は設立以来、海外のさまざまなクライアントと取引していますが、その間、数十万円の案件を納品後に相手先企業が倒産して払えなくなったり、担当者と連絡が取れなくなり、結局支払われなくなったりしたことが二度ほどありました。しかし、これは海外だから発生したというよりは、日本でもあることなのでは、というのが弊社の印象です。つまり、弊社の海外顧客の大半がきちんと期日通りに支払ってくれています。


もちろん、たまに支払いの遅延はありますが、悪意からではなく、請求書に記載していた PO 番号(発注書の番号、これを記載しないと請求書が無効になる場合がある)が間違っていたり、経理担当者がたまたま交代したりして処理が滞ったことが原因です。


まとめ

あくまでの弊社の取引経験をもとにしたものでしたが、海外クライアントの取引だから危険、不安という訳ではないことがお分かりいただけたかと思います。もちろん、海外・国内問わず、信頼できる相手と取引することは大切です。コミュニケーションの丁寧さや頻度、契約条件をきちんと明示するかなど、ポイントを押さえて取引先を探せば、きっと翻訳の案件の幅は広がり、翻訳者としてのスキルも向上することでしょう。



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著者プロフィール


YOSHINARI KAWAI


2008 年に中国に渡る。四川省成都にて中国語を学び、約 10 年に渡り、湖南省、江蘇省でディープな中国文化に触れる。その後、アフリカのガーナに1年半滞在し、英語と地元の言語トゥイ語をマスターすべく奮闘。コロナ禍で帰国を余儀なくされ、現在は福岡県在住。






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