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執筆者の写真SIJIHIVE Team

実は深い翻訳業界㉞~ストレス管理がうまくできる人・できない人



どんな職業にもストレスは付きものです。ストレスはとにかく悪者扱いされがちですが、うまく付き合えば私たちを成長させてくれますし、自分が何を大事にしているかをあぶり出してくれ、気づきを与えてくれます。そこで大切なのは、ストレスを自分でいかに管理することができるかです。

今回は翻訳者が抱えがちなストレスの原因を分析し、ストレスレベルを下げる方法について解説します。



翻訳者が抱えがちなストレス原因


翻訳者が抱えがちなストレスには以下のような原因があります。


孤独


翻訳の仕事は一人で集中して行うことが多く、連絡もメールやチャットなどが主であるた

め、特に繁忙期には自宅や作業スペースにこもりきりで誰かと話す機会がほとんどないという方もいらっしゃるかもしれません。人が集まるオフィスでは机が隣り合っている人とおしゃべりをしたり、休憩中にコーヒーを飲みながら談笑したりできますが、自宅で猫やサボテンばかりに話しかけているとストレスを抱えがちです(注:猫や植物のリラックス効果を否定しているわけではありません)。


リラックスできない


オフィスの場合、同僚が休憩するタイミングで一緒に席を立って歩いたり、ストレッチをしたりしやすいといった環境上のメリットがあります。しかし、自宅でひとり黙々と作業していると、気が付くとあっという間に2時間、3時間経過しており、リラックスすることをも忘れて翻訳に没頭することもあります。


納期


翻訳者と納期は切っても切れない関係にあります。「数時間後」に納期が迫っている超短期案件が続いたり、大型案件を納品したと思いきやその先にまた次の仕事が待っていたりと、納期の連続は翻訳者にとってのストレスの主な要因だといえるでしょう。


想定外のフィードバック

自分が丹精込めて仕上げた翻訳に想定外のフィードバックがくることもあります。だれでも褒めてもらえるのは嬉しいものですが、毎回全てのクライアントを満足させられるとは限りません。高い評価を貰えると思いきや、時にやってくる厳しいフィードバックで自分の仕事だけでなく、自分が大切にしているものまで否定されるような気持ちになり、心が折れそうになったことは誰しもあるのでは?



翻訳者に役立つストレスマネジメントのコツ


以上のようなストレス要因に心や身体がやられるままにすべきではありません。ここでは、役立つストレスマネジメントの4つのコツについて解説します。


タスクリストを作る


仕事効率化や生産性向上のためにタスクリストが重要であることはもはや多くの方が認めるところです。しかし、問題はタスクリストを作る方法です。


これは企業と DX の関係に似ています。DX が強調される中、多くの企業がツールを IT 化したり、クラウドを導入したりしていますが、かえって業務フローが複雑になり、効果を感じられないという現象が生まれています。


同じようにタスクリストを作ることで仕事のストレスが減るどころか、かえってやることが増えて生産性が低下していると感じるなら本末転倒であり、そのやり方は間違っています。例えば、Trello や Asana、Google ドキュメントなどタスクリストを作るためのツールやアプリは山ほどあります。しかし、これらのタスク管理ツールをカレンダー表示にして1日に行うタスクが全部表示されなかったり、うっかり期日を1か月後にして忘れたり、誤って消してしまったりすることもあります。


「デジタルツールを使っているのに何だか全然効率化されている感じがしない…」という方におすすめなのは、もっとも原始的な方法、つまり、1日にやることを白い紙に書き出して、それが終わるたびに横線で消すことです。タスクを優先度順に並べてみましょう。それに慣れたら、1週間分のタスクリストを作って、それぞれの日にやるべきことを書き出してみるのも良いでしょう。


たまには「通勤」してみる


自宅で仕事している翻訳者の方は多いと思いますが、たまには「通勤」してみてはいかがでしょう?「通勤時間さえもったいない。納期を間に合わせるためには自宅で作業するのが効率的なはず!」と考えずに、短時間でも良いので外に出かけてみましょう。駅まで歩き、電車に乗っているだけでも気分転換になりますし、思わぬところからヒントが生まれることもあります。


例えば、しっくりくる日本語が見つからず翻訳が行き詰っているときに、ふと見かけた飲食店の店名やロゴ、電車の広告などがインスピレーションを与えてくれることもあるかもしれません。


自動返信メールや「ステータス」を活用する


「翻訳者は納期に合わせていつでも対応できるはず(または、するべき)」と思われている節があります。そこで、外出中や休みたい日には「自動返信メール(vacation reply)」を使いましょう。相手が急いでいても、自動返信メールによってワンクッション置くことができます。また、チャットツールを主にやりとりに使っている人は「ステータス」を「離席中」「休暇中」にしておいたり、プロフィールの名前の部分に「3/30まで休み」などと入れておいたりするのもおすすめです。


そして、休みを宣言したなら、その時間はしっかり休みましょう。丸1日休むのが難しければ半日でもメールに返信しない、あるいは返信する頻度を下げるようにして、自分の用事やリラックスに集中します。


翻訳はロジカルに、仕事は前向きに


ロジカルであることは感情のコントロールをする上で非常に重要です。納品物を「自己表現」として捉えると、クライアントからネガティブなフィードバックが返って来た場合に自己否定されたような気がしてショックを受けてしまいます。しかし、自分の翻訳をいつもロジカルに捉え、なぜ自分の訳が適切なのか、その言葉を選んだ根拠をきちんと提示できるようにしておけば、納品した仕事に自信が持てます。

仮にクライアントから否定的なフィードバックが来ても「相性の問題」と考えることができるのです。この考え方はレビュアーや RtR(レビューされたものをさらにレビューする)を担当する方々にとっても大切な視点です。


毎回胸を張って納品できれば、仮に都合があわず見送った案件があっても、くよくよ考えず前向きな気持ちを保てるため、ストレスレベルを下げることができるでしょう。



まとめ

納期との戦いである翻訳者の毎日。もし、厳しい納期が続いて疲弊しているなら、時には仕事を「断る」ことも必要です。「この仕事を断ったらもう依頼はこないのでは…」と心配になるものですが、翻訳者としてのスキルと人間性が評価されていれば大丈夫、仕事は必ずやってきます。上に紹介したヒントを活用して、ストレスと上手に付き合っていきましょう。




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著者プロフィール


YOSHINARI KAWAI


2008 年に中国に渡る。四川省成都にて中国語を学び、約 10 年に渡り、湖南省、江蘇省でディープな中国文化に触れる。その後、アフリカのガーナに1年半滞在し、英語と地元の言語トゥイ語をマスターすべく奮闘。コロナ禍で帰国を余儀なくされ、現在は福岡県在住。


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