日本ビジネスメール協会が 2020 年に行った調査によると、ビジネスパーソンがコミュニケーションをとる手段の中でメールが最も多く( 99.1% )、一日の送信メールは平均で 14.06 通、受信メールは 50.12 通だったそうです。
最近は社会の変化に伴いチャットやビデオ会議の利用率が急増していますが、メールがまだまだビジネスにおける主要なコミュニケーションツールであることは言うまでもありません。しかし、電話や直接会って話す時のマナーにはうるさくても、メールの書き方をわざわざ教わろうとする人はそれほど多くないように感じます。
コロナ禍でますますテキスト中心のやりとりが増える中、メールによるコミュニケーションの質はそのまま仕事の生産性につながるといっても過言ではありません。といっても、こちらがいくらメールの伝え方に心を砕いても、相手が意に介さず、解読不能な、分かりにくいメールを送ってくる場合はどうしたら良いのでしょうか?以下ではそうした暗号並みのメールをかわす 3 つのコツをご紹介します。
1.まず自分が「伝わる」メールを心掛ける
「ミラーイメージの法則」をご存じでしょうか?自分の他人に対する態度や言動は、そのまま自分のほうに跳ね返ってくることをいいますが、メールのやり取りにもこれは当てはまります。
受け取るメールにいつも頭を悩まされているからといって、こちらもぞんざいなメールを送り続けては、いつまで経ってもメールのやりとりのストレスから解放されることはなく、悪循環です。
皆さんが受け取ったときに読みたいと思うのはどんなメールでしょうか?いろいろな要素があると思いますが、一言で言えば「伝わる」メールではないでしょうか?
コミュニケーションの語源はラテン語の「コミュニス」ですが、この語には「共有する」という意味があります。つまり、メールでも自分が伝えたいことを一方的に発信するだけではなく、その情報を相手にも同じレベルで理解してもらえてはじめて「コミュニケーション」が成立するのです。
では、どうしたら「伝わる」メールが書けるのでしょうか?国会答弁を聞いている場面を想像してみてください。話されている語彙は明瞭ですし、文法も日本語として正確です。しかし、誰とも目を合わせずにつらつらと話し続けたり、原稿の棒読みで早口なスピーチでは何も伝わってきません。つまり、そこに共感が生まれていないのです。
メールも同じです。語彙や文法が正確でも、長い文章を隙間なく詰め込んだようなテキストが送られてきたら、伝わるものも伝わりません。それで、目指すべきなのは魅力的な Web サイトと同じような、「視覚的に整った」メールなのです。適度な改行、文章をブロックごとにまとめること、ブロックの間には一行空けること、などちょっとした工夫でメールを開いた時のビジュアルで、第一印象は全然変わります。
相手が解読不能なメールを送って来ようとも、こちらはビジュアルが魅力的なメールで相手に感化を与え続けましょう。
2.リクエストは具体的に
前述した日本ビジネスメール協会の調査によると、4割を越える人が仕事で受け取ったメールに関して不快に感じたことがある、と回答していたようですが、「質問に答えていない」( 45.16% )がトップにランクインしています。送った方としては 1 回のメールで済ませるつもりだったのが、再度送る必要が生じ手間がかかるため、「不快感を感じ」ている様子が伺えます。
しかし、オーラル、テキスト問わず、どんなコミュニケーションでも言えることですが、誤解が生じたとき、どちらかが 100% 責められるべきということはまずあり得ません。相手が 90% の責任を負うとしても、自分も 10% の範囲でやれることがあったはずなのです。
細かい点を確認しようとしてメールを送ったのに、結局大雑把な回答しか返ってこなかったとか、核心を突いた答えが得られないというのはよくあることです。このような場合は、
相手に自分のメールの意図が伝わっていない
今すぐ答えられない内容である
メールより電話や対面のやり取りを好む相手
のいずれかである可能性が高いと言えます。電話でフォローアップしたり、メール本文に文字が多い場合は添付資料としてまとめて送ったり、分かりにくい点がないか見直してメールの内容をブラッシュアップしたりと、自分が欲しい答えを得るために何ができるかを再度考えてみましょう。
3.期待しすぎない
「自分はやれることを全部やった」と思っても、相手がそれに答えてくれるとは限りません。「こっちはこんなに心を砕いてメールを書いているのに」と考え始めると、相手に腹立たしさを感じ、ストレスが増えるだけです。実際に会って話してもコミュニケーションがなかなか成立しない人がいますが、これはメールでも然りなのです。そんな相手のことは、あきらめず、怒らず、気長に付き合うことにしましょう。
相手の正確や年代によっても好まれるコミュニケーション手段はさまざまです。
予想外の反応に悩まされないためにも、「この人はメールよりも電話派」「この人には簡潔なメールだけで OK」「この人にはメールした上で電話のフォローが必要」など、良くやり取りする相手のパターンを把握しておくと良いでしょう。
また、メールの良いところは一度開封してもまた「未読」に戻せることです。一旦開いたメールをすべて読み込む余裕がない場合、または今すぐ詳細を返信しなくても良い内容の場合は、まず「取り急ぎ受信した」旨を返信して未読に戻し、後で時間ができたときにまとめて返信する方が効率的です。
以上、暗号並みのメールをかわす 3 つのコツについてご紹介しました。皆さんのメールのやりとりが、本当の意味でコミュニケーションツールとして、共感を生む場になりますように!
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著者プロフィール
YOSHINARI KAWAI
2008 年に中国に渡る。四川省成都にて中国語を学び、その後約 10 年に渡り、湖南省、江蘇省でディープな中国文化に触れる。現在はアフリカのガーナ在住、英語と地元の言語トゥイ語と日々格闘中。
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