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実は深い翻訳業界㊷~言葉は生き物:翻訳者が日々アップデートすべき理由とその方法

執筆者の写真: SIJIHIVE TeamSIJIHIVE Team

黒い背景の前に両手に本を開き目を閉じている外国人の男性の頭に、無数の小さな紙切れが入っていく様子

「言葉は生き物」とよく言われます。インターネットやSNSによって言葉の変化のスピードはさらに倍増し、日々新たな言語が生み出されています。それは日本語に限らず、英語や中国語でも共通している現象です。その程度たるや、音楽評論家、ラジオ DJ のピーター・バラカン氏が「言葉は生き物と言いますが、今の英語は化け物」とすら言うほど。


翻訳者が刻一刻と変わり続ける言葉に置いていかれ、アップデートを怠ると、仕事のクオリティにも影響します。そのため、翻訳者にとって言葉の変化を常にキャッチし続けることは不可欠といえるでしょう。


今回は、言葉のアップデートが重要な理由と、そのための具体的な方法について解説します。


言葉のアップデートが重要な理由

人間の頭部イラスト。脳内には歯車、ネットワーク図、音符、本、電球、グラフ、虫眼鏡、パズル、ハートなどのモチーフが描かれ、知的な活動や思考を象徴しているグラフィック画像

翻訳者にとって日々言葉のアップデートが重要な理由は以下の3点に集約されます。


マーケティング翻訳における即時性


例えば、弊社が得意としているマーケティング翻訳では即時性が求められます。マーケティングは特に消費者心理や文化的背景が反映される領域です。


キャッチコピーの変遷を見るとその点が良く分かります。例えば、かつて風邪薬のキャッチコピーは「風邪でも、絶対に休めないあなたへ。」(エスエス製薬、「エスタックイヴ」シリーズ)のように、体調が悪くても出勤を優先させる日本の労働習慣を背景にしていましたが、現在では「かぜの時は、お家で休もう!」(シオノギヘルスケア、「パイロン」PLシリーズ)や「今すぐ治したいつらい風邪に」(エスエス製薬、「エスタックイヴ」シリーズ)に変わっています。


その背景には、「自分に厳しく」よりも「心地よさ」、「刺激」よりも「安心感」を重視するマーケティング戦略があります。翻訳もマーケティングトレンドを無視していると、消費者の心を打つことはできません。


ターゲット市場の変化


マーケティング翻訳の場合、必ず訴求したいペルソナ、消費者、ターゲット市場があり、ニーズが絶えず変化します。


例えば、業界によっては特にジェンダーや D&I(ダイバーシティ & インクルージョン)、SDGs などのトレンドに敏感です。そのため、そうした視点を度外視した翻訳はユーザからは受け入れられず、時代錯誤なものとして拒絶される可能性があります。


翻訳者としての言葉に対する感性を磨きたい方はこちらもチェック:


SEOと翻訳の関連性


今日、多くの翻訳は紙媒体よりは企業のオウンドメディアや商品サイト、EC サイトなどのネット上のコンテンツとしてユーザの目に触れることになります。そして、その際、いかに優れた正確な翻訳であっても、SEO の観点が欠如していれば、多くの人の目にとまることは難しくなります。最新のキーワードを知っていくことで、多言語マーケティングでの成果を最大化できるのです。



言葉のトレンドをつかむための具体的な方法

スマートフォンから浮かび上がる未来的な3Dインターフェース。幻想的な紫と青のグラデーションが広がり、デジタルの世界が手のひらに現れるようなイメージ。

ここでは言葉のトレンドをつかむための4つの具体的な方法をご紹介します。


SNS とニュースの活用


1つ目の方法はもっとも一般的な方法です。X や Instagram、LinkedIn などのプラットフォームを使って業界のトレンドをチェックします。


中でも翻訳者として積極的に活用するとよいのが LinkedIn です。LinkedIn は他の SNS に比べて日本ではユーザが少なく、知名度が低い印象がありますが、欧米では B2B マーケティングの協力なツールとして活用されています。


Google トレンドの活用


2つ目は Google トレンドの活用です。Google トレンドはキーワードの検索需要の推移をグラフでチェックできるツールです。無料で利用でき、アカウントも登録も必要ありません。


日別のトレンドワードや、過去24時間のトレンドワードをチェックできるため、今、日本で、世界で何が話題になっているのかを読み取ることができます。


業界イベントやウェビナーに参加


3つ目は業界イベントやウェビナーに参加することです。翻訳やマーケティング分野の最新情報を得る絶好の機会になります。医療分野の翻訳や、特定の国や料理に特化した翻訳など、専門分野に関する翻訳を手がけている場合は、その領域の第一線で活躍している翻訳者が開催するセミナーに参加するのも良いでしょう。


多言語の読み物を日常的に読む


4つ目は、自分が専門としている言語でニュースサイトやブログを閲覧することです。そうすることで、言葉のニュアンスを学び、感覚を磨きます。


ちなみに私は中国語を専門にしているため、「CCTV」と「BBC 中文」をブックマークに入れて、毎日の仕事の合間に見るようにしています。膨大なコンテンツを含んでいるため、それら全部に目を通すことは不可能ですし、熟読する時間もありません。しかし、毎日見出しを見るだけでもトレンドは何となく見えてきますし、よく使われるワードにも目がいくようになります。


翻訳者が身に付けるべきリサーチスキルについて知りたい方はこちらもチェック:



翻訳者が日常で実践できるアップデート術

開かれた本から咲き誇る色とりどりの花々。ページの間から生命があふれ出し、物語が鮮やかに息づく幻想的なアート。

以上を前提にして、ここでは翻訳者が日常ですぐに実践できる言葉のアップデート術について解説します。


個人的な語彙リストの定期更新


実践している方も多いと思いますが、おすすめは翻訳者としての語彙リストを作り、それを絶えず更新することです。仕事を通じて得た新しい単語や表現があれば、その都度それをメモし、定期的に見直すようにしましょう。また、雑誌を読んでいて後で調べたい単語があれば、リスト化しておくのも便利です。


専門分野のトレンドを深掘り


自分の専門分野(例:マーケティング、IT、仮想通貨、医療)などの語彙を増やし、最新のトレンドを学ぶために深掘りしましょう。


例えば、前述した BBC 中文では中国語と日本語をワンタッチで切り替えられるため、気になる単語をチェックして、それが日本語でどのように翻訳されているかを調べて、勉強できます。


語彙を増やすための別の方法について知りたい方はこちらもチェック:


ネイティブとの交流


ターゲット言語を話すネイティブと交流することでも最新の言語や文化を学べます。対面でなくても、オンラインのコミュニティや SNS も活用してみましょう。



まとめ

夜空の下、光り輝く幻想的な樹を見上げる人物。本を手にしながら、まるで物語が現実となり、星々とともに広がっていくかのような神秘的な光景。

翻訳者がトレンドを掴むことは、質の高い翻訳だけでなく、信頼されるプロフェッショナルとしての成長につながります。言葉に対する姿勢は、個人の心がけやルーティンの確立でかなり変わるため、日常的に取り組める簡単な方法から実践してみましょう。



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著者プロフィール


YOSHINARI KAWAI


2008 年に中国に渡る。四川省成都にて中国語を学び、約 10 年に渡り、湖南省、江蘇省でディープな中国文化に触れる。その後、アフリカのガーナに1年半滞在し、英語と地元の言語トゥイ語をマスターすべく奮闘。コロナ禍で帰国を余儀なくされ、現在は福岡県在住。


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