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執筆者の写真SIJIHIVE Team

実は深い翻訳業界⑭~ノマド翻訳者が持つべき7つ道具



「弘法筆を選ばず」ということわざがあります。


「弘法」とは書の達人だったとされる弘法大師のことで、「弘法にも筆の誤り」(「達人も時には失敗する」の意)ということわざでもよく知られています。


「弘法筆を選ばず」の真意は「達人はどんな道具でもそれを使いこなし、素晴らしい作品を作り上げる」というより、「技術に熟練していない者ほど、できない言い訳として道具を持ち出す」ことを戒める点にあるようです。


翻訳に関して言えば、どんな道具でも優秀な翻訳者は必ず成果を生み出すことができるかと言われれば、やはり「否」と言わざるを得ないのではないでしょうか?

クオリティの低さをCATツールや辞書のせいにすることは論外で、日々翻訳者として研鑽を積まなければならないことは言うまでもありませんが、道具はやはり大事、です。


そこで今回はノマド翻訳者が持つべき7つ道具をテーマに書いてみたいと思います。


①ノートパソコン


かつて翻訳者には電子辞書が必須だったかもしれませんが、いまやネットに繋ぎさえすれば、ノートパソコンで膨大な単語を検索できますし、クラウド型の CAT ツールで仕事もできます。


翻訳業に必要なノートパソコンのスペックがどのくらいかは使うツールによっても異なりますが、Trados や memoQ などをサクサク使いたいのであれば、本体メモリは最低でも 8GB、できれば 16GB は必要でしょう。

また、CAT ツールだけでなく、ブラウザや PDF ビューア、Word や Excel なども同時に開くことになるため、ノートパソコンといってもあまり画面が小さいと操作がしづらいですし、作業効率も下がります。


②スマートフォン


「実は深い翻訳業界⑫〜毎日がカオス!翻訳プロジェクトの苦い現実」でも触れたように、ノマド翻訳者にクライアントから発注がかかるタイミングは予測不能です。ノマド翻訳者なら、いつでもどこでも対応できるようにコミュニケーションツールをスタンバイしておかなければなりません。


スマホの通知をオンにしておけば、メールや SlackChatworkを使った連絡もすぐに可能ですし、AsanaBasecampmoday.com などのプロジェクト管理ツールでのやり取りも問題ありません。

本格的な翻訳作業は PC を開かなければなりませんが、ちょっとした成果物の確認作業やオンラインミーディングであれば、スマホでも完結します。


③イヤホン


いまやどこにいてもクライアントとのミーティングはオンラインで可能です。ただ、その場合、イヤフォン携帯が必須でしょう。


ワイヤレスイヤホンは便利ですが、複数の端末と繋ごうとするとペアリングに失敗することも多いため、スマホ用、PC 用それぞれに分けて持っていたほうが安心です。また、もしものときのために有線イヤホンも1個持っておくことをおすすめします。

また、ミーティングで使用する用途を別にして、騒がしい環境でもイヤホン(特にノイズキャンセリング機能に優れているもの)があれば一瞬のうちに自分の世界に入り、翻訳作業に専念できます。



④モバイルバッテリー


ノマド翻訳者にとって電子機器の電源確保は死活問題です。スマホの充電はもちろんのこと、ノート PC の充電までカバーしてくれるアイテムがあれば安心です。


モバイルバッテリーを選ぶポイントは容量と出力です。現在、スマホのバッテリーが大容量化しており、4,000mAh(ミリアンペア・アワー)以上のものが主流になっていることから、モバイルバッテリーもそれ以上のものを選べば、スマホ1回分をフル充電可能です。ただ、スマホを複数回、できればノート PC の充電までと考えると、容量 20,000mAh などの大容量を選びたいところです。それでも重量は300〜400g、価格も数千円で買えてしまいます。ノマド翻訳者にとっては良い時代になったものです。


⑤HDMI ケーブル


コワーキングスペースやレンタルオフィス等で仕事をする場合、有難いことにモニター付きの場合もあります。上述したように翻訳作業は複数のソフトを同時に開いて作業するため、HDMI ケーブルとノート PC を繋げば作業効率がグッとアップします。ケーブルがごっついタイプではなく、スリムなものも多数あるため、1本あると便利です。


また、長時間外出する場合はスマホやイヤフォンの充電ケーブルも携帯しておくと安心です。


⑥ポケット Wi-Fi


ノート PC があってもフリー Wi-Fi がない場合、あるいはあってもセキュリティが心配な場合はポケット Wi-Fi が必須アイテム。Wi-Fi ルーターにはいろいろありますが、弊社ではGlocalMe(グローカルミー)を使っているメンバーが多いです。uncloudlink 社から発売されているクラウド SIM 内蔵の Wi-Fi で、SIM カード不要、しかも世界100ヶ国以上で使用できる優れもの。専用アプリをスマホにダウンロードし、利用したいパッケージをプリペイドで購入します。



⑦メモ(ノート)とボールペン


どれだけ電子機器が便利になったとしても、記録媒体として「手書き」にかなうものはありません。電源も Wi-Fi も必要ありませんし、どんな環境でも瞬時に立ち上げ、書き始めることができます。


また、図表を書き込んだり、レイアウトを変えたりするのも自由自在です。ノートも星の数ほどあり、「書ければ良い」という考え方もありますが、弊社メンバー一押しはニトムズの STALOGY ノート。どんなペンを使っても書きやすい「上質紙81.4g」が採用されており、見出しやラベルも付けられ、情報の整理にも便利です。


ただ、ノートの難点は情報にアクセスするのに時間がかかるということ。弊社メンバーもポストイットを貼ったり、蛍光マーカーで色付けしたりするなど、自分なりの検索機能を工夫しています。中には、ノートを持ち歩かず、メモをばらして持ち歩く人もいます。



道具にこだわると仕事に愛着が湧く


ノマド「翻訳者」というよりは、ノマドワーカーの7つ道具の紹介になってしまいましたが、ノマドだからこそ、道具選びは大事だといえるのかもしれません。

オフィスでも家でもカフェでも公園でも、環境がどうであれ、愛着のある道具を取り出すことでノマドワーカーは仕事モードに入るのです。


ここにお気に入りの珈琲やハーブティーがあれば、もう言うことはありません。



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著者プロフィール


YOSHINARI KAWAI


2008 年に中国に渡る。四川省成都にて中国語を学び、約 10 年に渡り、湖南省、江蘇省でディープな中国文化に触れる。その後、アフリカのガーナに1年半滞在し、英語と地元の言語トゥイ語をマスターすべく奮闘。コロナ禍で帰国を余儀なくされ、現在は福岡県在住。




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